四十肩とオステオパシィ


今から45年前のコトです。

高校1年生だった僕のクラス担任は、
古文を教えるM先生でした。

当時40代後半だった、小柄な男性です。

授業はもちろん、
生徒たちとの接し方も厳しく、
まさに、古き良き先生の代表格的な存在でした。

そんな彼は、授業が終ると、
黒板に書いた文字を辛そうに消した後、

右腕を肩の高さで回しながら、
眉間にシワを寄せていたので、

興味を持った僕は、
その仕草の理由を彼に尋ねたのです。

 腕が上がらないのさ。
 四十肩って言うんだ。
 年を取ると、みんながなる病気だよ。

彼の説明によると、

前方からは右腕を旋回でき、
それなりの高さまで腕を上げられるのに、

側方からは殆ど上がらないと言う、

15歳でピチピチの身体の僕たちには
到底理解不能な症状に、
M先生は日々悩まれていたのです。

加齢とは恐ろしいな、という印象が、
若い僕の脳裏に焼き付いたのは、
言うまでもありません。

それから39年が経過した6年前、

その間にロボットエンジニアや歌手を経験し、
治療家として落ち着いた僕でしたが、

自らの乾癬治療を通じて知り得た
エドガー・ケイシィの言葉にヒントを得て、

クラシカル・オステオパシィを学ぶチャンスに恵まれました。

人間の生活習慣は、
骨格の変形をも招きますが、

その結果、慢性化してしまった身体問題を、
この手技は解決してくれます。

M先生の患っていた四十肩は、
まさにその好例です。

日々の姿勢の悪さや運動不足が、
肩甲骨や鎖骨を癒合させてしまい、

動きが制限され、
痛みを伴うようになった状態が
この症状であり、

M先生も例外ではありませんでした。

この手技で、
こうした肩の問題を解決するためには、

腰椎の4番、5番と、
胸椎の1番、2番、6番、
頚椎の4番から7番と、
肋骨の1番、2番の弛緩を行います。

これらを正常に動くようにすることで、
この症状は改善しますが、

実際に行うことは、
各部位の動きの鈍い方向を探し出し、

その反対方向に、
数グラム程度のベクトル性の刺激を与え、
正しく機能するように調整します。

施術をしていると、
リンパの流れが改善され、
指先から脈動として伝わって来るのですが、

生命の息吹を感じる、
それはそれは、素敵な瞬間です。

数グラムの力ですから、
腕力は全く不要ですが、

骨格の微細なズレを検知したり、
こうした施術中の脈動を感じたりするために、

指先が生体センサーとして機能するよう、
その感度に磨きをかけねばなりません。

大好きなアコースティック・ギターの演奏や、
エネルギー査定にも通じる手技ですので、
僕には向いていたようです。

数十分ほどの施術ですが、
これによって、まず痛みが改善され、
腕の動作は本来の状態に戻ります。

しかし、その後も、
患者さんが同じ姿勢を続け、運動が不足すれば、
再び問題が起こります。

多くの社会人に運動が足りていない点、

また、着座時間が長いにも関わらず、
その姿勢に無頓着な点が、

問題を顕わにしているようです。

筋肉は形状を記憶する組織ですから、
背骨を丸めて腹部に脂肪を寄せ集めると、

お腹の周囲の筋肉が、
その状態を保持させるように
形状記憶をはじめます。

ですから、闇雲にダイエットを始める前に、
まず、姿勢を気にするべきでしょう。

壁に背中を押しあてて、
自分の姿勢がどれだけ曲がっているのか、
しっかり知るコトからはじめましょう。

脊椎の問題は、集中力も低下させ、
自律神経の問題にも直結します。

姿勢は大切ですね。

気が付けば、僕は、
当の昔にM先生の年齢を越えましたが、

幸運にも四十肩とは無縁でした。

あの日に帰って、M先生に自慢したい気分です。

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